6月 初夏の花 (6月7日)
先週まで朝晩は氷点下でしたが、6月にはいってようやく、朝はゼロ度から少し気温が上がりました。それでも、昨日までは寒くてほとんどの人が長袖でした。
ところが、今日、突然夏らしい陽気になり、昼間の温度計は20度を少し上回りました。ようやく、野菜を地面に直接植えられる季節になりました。
山深いニューイングランドの春は1~2週間ほどの短期間で、すぐに夏がやってきます。公立学校は大抵6月中旬から8月末か9月上旬までが夏休みです。このところ、いたるところでガーデンクラブの資金集めのセールが行われています。
実は、私もガーデンクラブの一員です。2週間前はまだ寒く氷点下のなか、クラブの皆さんと一緒にいろいろな植物を売りました。これらは、すべて会員が持ち寄ったものです。ぎぼうし、ディリリー(日光きすげのようなもの。アジア産です。)、やぶらん、レィディズマントル、ラムズイヤー、オレガノ、ローズマリー、チャイブ、西洋オダマキ、あやめ、ベルガモット、ミント、タイム、タチアオイ等、たくさんの多年草がありました。ほとんどを売ることができました。と、いうのも市価よりもずっとお安いのです。この資金をもとに、町の美化運動ができるので、買った方も売ったほうもにこにこです。これぞ、ウィンウィン(Win-Win)ですね。
私もいろいろな花を買いました。一番欲しかったのは「スイカズラ」。でも、残念なことに会場にはみあたりませんでした。町のお店にもおいていなかったので、ここは寒いのでスイカズラが生き残ることはできないのかと内心がっかりしていました。ところが、意外なところにありました。
自宅の庭の片隅にひっそりと咲いていました。

ところが、何かが違うのです。
日本でみかける自生のスイカズラと形は同じでも、何かが違うのです。
スイカズラは私のもっとも好きな好きな花の一つです。それを、今まで見逃していたのは理由があったはずです。
それは、香り。
ここで目の前にあるスイカズラには、香りがないのです。
スイカズラは時としてその姿を見逃してしまうことがあります。勢いよい葉の下に、可憐で白い(または黄色い)花は、ふっと隠れていることがあるからです。それでも、「あ、スイカズラがどこかにある。」とわかるのは、その馥郁(ふくいく)たる香りからなのです。
日本で、時々通りかかる神社の崖にそれを発見したのはその香りからでした。また、テネシーに昔住んでいた借家の庭の端にスイカズラを発見できたのも、その香りをもとにそこにたどり着いたからです。(余談ですが、アメリカ南部ではスイカズラは至るところにあり、5月の運転最中には、えも言われぬすばらしい香りに包まれうっとりした思い出があります。)
スイカズラは、特に朝晩にその独特の香りを強く出します。ところが、今、目の前にあるスイカズラは、まったく何の匂いもしないのです。これは、どうしたことか。ウェブや手持ちの本で原因を探ってみました。
わかったのは、どうも、この目の前にあるスイカズラは、私の知っているスイカズラではなさそうなのです。何かと混合しているようです。良い匂いのするおなじみのスイカズラはLonicera japonica (Japanese Honeysuckle)で、日本のもの。北米に帰化したそうです。心外なことに、これは「侵略的な雑草」と位置づけられているようです。ウィキペディアに記載されていたので、これは正確ではないことを祈りますが、イリノイ州、バージニア州では、有害な雑草とさえされているそうです。日本のスイカズラファンとしては、残念至極。
しげしげと、目の前のスイカズラを観察しました。すると、純粋な乳白色か黄色い花弁ではなく、かすかに、赤みが白や黄色にまざっていることを発見しました。どうも、正真正銘のJapanese Honeysuckleではないようです。日本のスイカズラのすばらしい香りがなくて、無念。でも、形だけは、おなじみのものです。
今、外は暗闇に包まれはじめて、逢魔が時。日本のスイカズラは、気品高くその香りを放ち始める頃です。日本とテネシーのスイカズラの思い出を、私は目の前のスイカズラに映しています。香りがあればこの思い出は更に鮮明になるでしょうが、今は我慢しましょう。いつか必ず封印から、本当の香りと共に、解き放たれるときがくるでしょうから。
(2008年6月7日)